
あなたは、何かのにせものではないし、間違った何かでもない。
多数派と同じように感じる人になろうと考える必要なんてないのです。
(「あなたがあなたであるために―自分らしく生きるためのアスペルガー症候群ガイド 」,吉田 友子 (著), ローナ ウィング (監修),P.48より)
こんにちは。三原たか です
自閉症スペクトラム
(アスペルガー)をもっています
大人の発達障害者です

もしあなたが学生なら、もし大人でも、
アスペルガーの傾向があるならば、
自己肯定感を与えてくれる素敵な本です。
本の紹介
自閉症研究の世界的権威と第一線の専門医が、”当事者のあなた”にいま伝えたいこと
☞ASDかどうか調べるための本ではありません
☞ASDの傾向をもつ子どものために書かれています
ASDのための特別な工夫
「あなたがあなたであるために―自分らしく生きるためのアスペルガー症候群ガイド 」は、とてもやさしい言葉で文章が書かれています。
ASDの知識、工夫、アドバイスがわかりやすく段階を踏んで丁寧に説明されています。
読者が子どもの当事者であることを想定しているからだと思います。
大人になって振り返ると
子どものときのぼくは今よりももっと傷つきやすかったです。
上からこうだよと、説明されるだけでは心がついていきません。
なぜ「特別な工夫」がするのかについても、本当にどうしてそんなことをするのかと、一つ一つ理由が書かれています。

けれど、世界にはたくさんの暗黙の了解や守らなければいけないルールがいたるところに張り巡らされています。
ASDらしい発言は、ときには周囲から忌み嫌われてしまいます。
そして、自己肯定感を下げてしまいます。
自己肯定感を下げないために
「自分はたいした人間ではない。粗末に扱われても構わない」
そんなふうに自分の価値を下げてしまうのは違うと思います。
自分の本当の価値を理解する必要があると思います。
ASDの人が周囲へ特別な工夫をする理由は、本書ではこのように書かれています。
ただ、忘れないでください。
「特別な工夫」が必要なのはあなたが間違っているからではありません。
ASらしい感じ方や行動パターンだって「正しい」のです。
たまたまこの地球では少数派だというだけなのです。
少数派を説明した心惹かれる2つのエピソードを紹介します。
お葬式のときに火の温度をたずねた少女の話
自閉症スペクトラムのある少女は、
科学や知識、現象と理解に興味をもっていました。
おじいさんの火葬場で、
人の焼く温度が気になりました。
その場でお父さんに聞いてしまいました。
少女は、本当は悲しまなければいけない場面でした。
だから、知りたいという気持ちが勝ってしまった自分をなげきました。
大切な人からもらった古い本を見せたときの少年の話
著者はASDの少年に、大好きなおじさんからもらった本を紹介しました。
大多数を占める定型発達ならば、おじさんのことを聞くと思います。
けれどASDの少年は、
「その本の活字の大きさはどのくらいですか?」、
「何ページありますか」と聞きました。
おじさんのことよりも、古い本の体裁が気になったからです。
ASDは間違いではない少数派なだけ
場にそぐわない発言や疑問は、のちのちにトラブルにつながってしまいます。
けれど、その気持ちは間違ったものではないと書かれています。
ただ、周囲とのトラブルをさけるために、信頼できる相手にだけ話したほうが良いとも書かれています。
そして、特別な工夫はこの世界で間違っているからではなくて、少数派なだけだと何度も繰り返し書かれています。
とても、やさしくて配慮が行き届いた本です。
ASDが世の中でうまくやるための3原則
印象に残ったところを紹介します。
☞対処する悪者ではなく、長所としてみる
原則②治すんじゃなくて、補う
☞補う工夫は価値あるもの
原則③経験は計画的に積む
原則③経験は計画的に積む について
どうして原則③が重要なのか、書かれている箇所を抜粋しました。
☞苦手がなくなると主張する人もいるが私は反対だ
☞社会性やコミュニケーションを強制
☞たくさん練習しても失敗して自信を無くす
☞自信を無くして傷ついた子の苦しみは言葉では表せないほど
☞あなたは既に十分な努力をしている
☞努力が足りないのではない
☞多数派の子どもたちが味わっていない辛い経験に耐えてきた
☞だから、練習の手順を意識して欲しい
このような文章から具体的な練習の方向性と手順が書かれています。
努力すればよいものではない。
その言葉だけでも、ぼくは心に響きます。
ASDの傾向として、
言葉をそのまま受け取るという性質があります。

だから、努力や練習してもうまくいかないときはとても苦しいです。
人とのコミュニケーションをとろうとして失敗したときは、とても苦しかったです。
だから、ASDの親御さんでも先生でもサポーターでもなく、本人に向けた本書はとても素敵な本だと思いました。
本を読んで中学生のときの心の悲しさと向き合えた
ぼくがまわりとうまく溶け込めていなかったのは、中学生と高校生のときでした。
どうしてできないのか、今でも理解しきれていません。
それでも、この本は構わない、ただ少数派なだけだ、そう言っています。
自分が自分であるための本です。
本当のあなたらしくいるための本です。
この本を読んで少しだけ、中学生のときの悲しさと向き合えました。
まとめ
☞今よりももっと弱かったときのぼく
☞今よりももっと傷つきやすかったぼく
☞ただ自分らしくいたかったぼく
に読んで欲しいな、と思った本です
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